Q43)仏壇の向きについて

A43)
 沖縄に限らず仏壇の置く位置や向きについてはいろいろ気を遣うものです。「沖縄では仏壇は東か南向きにしなくてはいけない」とも聞きます。本当なのでしょうか?
 
 いろいろ調べてみました。何人かの人にも聞いてみました。私の結論から言うと「東でも南でも北でも西でも問題ないです。」 以下にその理由を説明していきたいと思います。
 
 まず仏壇の起源は、7世紀末の天武天皇の時代に仏壇が祀られるようになったのが始まりとされています。そこには、仏像と経文が配されていたと日本書紀に記されているそうです。その仏壇も貴族の間で祀られていましたが、時代を経るごとに仏壇の形式も定まり、鎌倉時代になると一般世間に広まりはじめ、江戸時代に庶民間に定着したとされています。この過程で仏像や経文の他位牌などが祀られて来たのでしょう。
 
 では、仏様が祀られる事が起源の仏壇ですから、仏教と方位についてはどうでしょう?仏壇の向きの理由でよく耳にするのが「西方浄土」と言う言葉です。西に浄土があるのでそちらの方向を向いて拝むのが良いと言う理由で東向きです。しかし、東方の浄瑠璃世界や、北方の霊山浄土など、仏の数だけ浄土の数があると言われていて、四周全方位に浄土があると言われています。日本の文化の源泉には「万の神」と言う考え方があると聞いたことがあります。木にも土にも水にも風にも全てのものに神は宿っていいると言う考え方です。仏と神では違いがありますが、抵抗なく共有できる日本文化の発想だと思います。話戻しますと、ご先祖様が居るであろう浄土は西だけではないのでは!?と考えられます。
 
 次に、気候風土の条件で東か南向きでなくてはいけないと言う説もあります。が、沖縄の北部の喜如嘉では仏壇は北向きで勝連の方のある浜比嘉と言う集落では仏壇は西向き、と知り合いの建築家が言っていました。浜比嘉の理由は、東側が海で台風などの暴風時南向きの家構えだと被害が大きく、反対側に山があるので西向きの家構えにしていて、仏壇も西向きになっているとのこと。個々の立地条件や周辺環境に適切に対応した方が良いと言うことですね。
 
 宗派の本山の方向に向けて配置すると言う説もあります。これについては、東向き、南向きの限定は存在しません。
 
 諸説ありまして、ニヌファ星信仰から北を背にして仏壇を置くなどもありました。しかし総じて考えてみると、東向き・南向きでなくてはダメ!、西向き・北向きは絶対にいけないと言う理由には行き当たりません。どの説、考え方で仏壇を配置するかで良いのではと思えるのです。
 
 現在、私の事務所で設計している住宅の仏壇は西向きです。四周浄土説と本山説を踏襲し、仏壇は家の中心を向きそこに住まう家族がご先祖様からいつも見えるような配置にしています。

 参考文献-Oh My Buddha

<2005年5月執筆>