● Collect Select ご主人

「カネはない。あるのは情熱のみ」
 そんな気概で始まったマイホームづくり。
「フツーの財力の施主」が「フツーの規模の住宅」を建てるわけですが、私にとってそれ(住宅)は唯一無二の存在でなければなりませんでした。

 自ずとあまたの設計事務所を訪ねることになるのですが、PWDは「小住宅にもキラリと光るテイストを盛り込める事務所」という印象を受け、設計を依頼させていただきました。
 私がこだわったのはプランとディテール。PWDはこの両方ともに充分過ぎる回答を用意してくれました。

 まずはプラン。
 スキップフロアは私が発案したのですが、私自身は流行りの「空間を縦に繋ぐ」プランをイメージしていました。しかし、PWDの提案は、よりプライバシーを重視したものだったので、いささか拍子抜けしたのを覚えていますが、いざ住み始めてみると、「階段という幹に部屋という果実が実っている」かのようなプランは大変使い勝手がよく、またプライバシー配慮の重要性も理解でき、私にとってベストな住空間といえるものになりました。まるで「重要なのは空間であって、プランではないですよ」と言われているかのようでした。

 そしてディテール。
 新進気鋭の建築家であることも理解していましたが、私がPWDに期待したのは細部へのこだわりです。「神は細部に宿る」と言われますが、ディテールに手を抜かないPWDの仕事ぶりには自然と期待させられました(私のように予算の限られた施主は、せめて細かい部分にこだわりたいものです…)。
 結果、遊び心満点の(そして、大工さん泣かせの?)内部空間に仕上がりました。
 玄関を入ってスペースエイジ的なトンネルを抜け、吹き抜けの階段を見上げるとチェコのキュビズム建築がそびえ立っています。まぁ、こんな家どこにもないでしょうね。
 そのほか、建具一つとってもフツーでないし、照明も別の空間を照らす役目を果たしていたり。住んでみないとわからない工夫満載です。「住宅は三度建てないと理想の住まいは手に入らない」と言われますが、幸運にも「一発でゲットできた!」という気持ちですね。

 古来、日本の芸術とはすべて「道具」だったと言えると思います。芸術品であり、日用品。日本において、芸術とは「使えるもの」なんですね。一方で、イームズは「優れた仕事はアートにもなろうが、アートとは製品ではなくクオリティだ」とも言っています。PWDの作品はその点からもアートたりうるんですねぇ(^^)

<2009年5月15日 Collect Select ご主人 より>